5-2. 実効値とオートゲインコントロール(AGC)
5-2-1. 波形の実効値
波の平均的な強度(エネルギー)を表すのに「波形の実効値」がよく用いられます。
連続時間信号x(t)に対する実効値xeは、次の式で
計算されます。

すなわち、波形を2乗して、それをある一定時間で平均し、全体の平方根を
取ったものが、実効値となります。また、実効値を2乗すると、波形の
平均的エネルギーとなります。
通常、交流電圧計などで表示される値は、この実効値となっています。
例えば正弦波に対しては、実効値は波形振幅(片側の山の高さ)の
1/√2(=0.707)となります。
【実習 5-2-1】
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実効値を計算するDSPプログラムを作成してください。
実効値は、上で述べたように、波形を2乗して、ある一定期間の平均を求め、
平方根を取ることで実現できますが、離散的なディジタルデータに対しては、
時間積分をデータの和(移動平均)に置き換えて、以下のように書き換える
ことができます。

これをそのまま信号の流れ図で書き表すと、以下のようになります。

なお、ここに見られる(N+1)点平均の部分は、
算術平均の高速算法を
用いると、より簡単に実装することができます。
なお、この場合、実効値y(n)はプラスの電圧値として、DSPボードの
出力端子から出力されることになります。
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SGから正弦波を入力して、実効値を出力してみてください。交流電圧計に
よる測定値などと比較してみましょう。平均時間長Nを変化させると
どうなるでしょうか。
5-2-2. オートゲインコントロール
この実効値を利用すると、入力信号の大きさに合わせてDSP内部での信号倍率
(利得)を調整し、自動的に出力信号の平均的大きさを一定にコントロールする
ことのできる「オートゲインコントロール(AGC:自動利得制御)」を作成
することができます。具体的には、出力信号の実効値を常にモニタしておき、
それが既定値よりも大きい場合は、入力信号に1未満の係数を乗算して小さく
して出力が既定値に収まるようにします。逆に出力が小さすぎる場合は、
入力信号に1より大きな係数を乗算して出力信号の実効値を大きくします。
このようなAGCの機能は、例えばAMラジオなどに実装されており、電波の強い
ところでも弱いところでも同じ大きさの音声信号を出力するために使用されて
います。
【実習 5-2-2】
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上で作った実効値のプログラムを利用して、自動的に利得を変化させる
AGCのプログラムを作成してください。
